ドールオーナーにとっては教本といっても過言でない、
『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』なる作品があります。

作者は「さとうはるみ」先生。
繊細な書き込みと心温まるストーリー・幅広いドール知識に加え、
ドールオーナーであれば思わず「あるある!」といってしまいたくなる小ネタまで。
何度も読み返したくなる素敵な作品です。

本記事では、そんな『ドルおじ』に関して、
ネタバレを交えながら感想を綴っていきます。

ネタバレを含まない感想もございますので、
興味がある方はご覧いただき、
是非とも『ドルおじ』という作品の魅力に浸っていただければ幸いです。

※本記事は、さとうはるみ(敬称略)著『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』(新潮社)の感想記事になります。
 ネタバレを多分に含みますので、まだお読みになっていない方はご注意ください。

※本記事内の画像は、電子コミックスから引用させていただきました。転載禁止です。
 関係者様がご覧になられて、問題ありと判断為された場合は掲載を取り下げさせていただきます。
 恐れ入りますが、お問い合わせよりご連絡ください。

作品概要

書名

ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話

著者

さとうはるみ(敬称略)

出版社

新潮社

掲載WEB

コミックバンチKai

主人公「矛橋真澄」(42歳)のドール邂逅からその魅力に沼る(ハマる)過程を非常に丁寧に描いた、
ドール趣味をしている人なら誰もが「分かるっ…!!」となるネタ満載の作品です。

X(旧Twitter)で大バズりしたことから連載化し、
現在は「コミックバンチKai」にて配信中。コミックスは4巻まで発売しています1

たくさんの「ドールあるある」がふんだんに含まれていてドールオーナーなら誰もが楽しめます。

しかし、私個人の意見を申し上げると『ドルおじ』の1番の魅力は
「ドールに興味がある人(まだドールを所有していない人)にとってかなり役に立つ教本である」こと。

私も1体目のドールお迎え前にこちらの作品を読み、
「絶対にドールをお迎えしたい!」と固く決意するきっかけの1つとなってくれました。

主人公の真澄さんが初心者であり、
星野くんをはじめとした様々な先輩ドールオーナーに支えられながら、
ドールオーナーとして一歩ずつ成長していく様子が非常にリアルです。

また、ドールを通した繋がりから人間的にも進化する様子も見届けられます。

さとうはるみ先生が、
「全人類を人形沼に沈めること」を目標としていることもあり、
優しくドールの魅力とドールを所有する意義を教えてくれる、そんな作品です。

とにかく最高なので、ドールに少しでも興味があるのなら必読書籍といえます!
いや、もう単純に物語としても物凄く面白いのでドールに興味がなくても読んでくれ!!

掲載先の「コミックバンチKai」をはじめLINE漫画やピッコマなどを利用すれば無料で読めますが、
是非読み返して欲しいので書籍・電子コミックスなどでの購入をオススメします。

感想

ここから各巻の感想を述べていきます。
各話感想部分はかなり主観的な感想なのでご注意下さい。

あと、引くほど長いよ!

1巻感想

ドルおじ1巻表紙
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』1巻

主人公の真澄さんがドール「Starlet(スターレット)」と邂逅する様子が描かれる本巻。
これまでの人生で何にも惹かれるものがなかった真澄さんが
初めて自分の心と向き合った感動満載のお話が収録されています。

突然のドールとの邂逅に戸惑いながらも、
スターレットや他のドールオーナーの優しさに触れて、
満たされた心のお陰で自分も周りに優しく接することができるようになる。

人間は、幸福で心に余裕がある間は他人に優しくなれて、
余裕がなくいつも苦しい状況だと他人に厳しくなってしまう。

真澄さんもまさしくそういう人間らしいキャラクター性で、
ドールに触れるようになってからドールと出会ってから
非常に柔らかい微笑みが増え続けているのが印象的でした。

【ネタバレ満載】各話感想はこちら

第1話「Starlet」

本話は初回なだけあって、とびきり最高な1ページ目が堪能できました。

「ウィドマンシュテッテン」「モルダバイト」とはいずれも宝石の名前で、
その宝石を再現したカラー描き込みの美しさに息をのむ。

私はLINE漫画でこの作品と出会ったため、初見はモノクロでした。
もちろんモノクロ状態でも十分美しく「この作品は当たりだな!」などと思えるのですが、
是非とも1話は掲載WEBサイトである「コミックバンチkai」を見て欲しい。

まるで宇宙を描いたような吸い込まれる作画です。
正直「初めてをカラーで見たかった……」と思っちゃったくらいには
カラーがマジで最高なんですよ。
まだ読んでいない人はホントにカラーで見て……。

人としては勝ち組ともいえる生活を送っていた主人公の真澄さん。
一見すれば羨ましがられる人生な反面、
心にぽっかりと空洞を作っている様子がまさに現代日本の社会人。

私はまだ真澄さんほど人生経験を積んでいませんが、
定年間近な父が「退職してから何も趣味がないのは嫌だ」と言って
ギターを習い始めた経緯を知っているので、
何かに打ち込める機会を欲して心の豊かさを求めている人は
多いんじゃないかなと感じています。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』1巻p.14
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』1巻p.14

そして、真澄さんが無意識のうちに手を出してしまったのが、
エーテルドール「スターレット」。

ドールの知識なんて全くないのに、
ただ心のままオークションに参加することを静かに決意する。
ここが第1話で私が1番好きなシーン。

この後入札金額が恐ろしいことになっているオチも含めて楽しい。
実際にオークションに参加する場合はマジで金額管理気を付けような!!

第2話「#うちのこかわいい」

本話のタイトルにもなっている「#うちのこかわいい」の存在を、
私は本作で初めて知りました。

こちらは現実に存在するハッシュタグで、
ドールオーナーさんによる珠玉のうちのこ写真を
X(旧Twitter)やInstagramなどで見つけることが可能。

私はドールオーナーになる前にこのタグの存在を知れたので、
「世の中にはいろんな種類のドールがいるんだなぁ…」と
真澄さんと同じ感想を抱いたものです。

そして、ドールオーナーになった今は
「どの子も可愛いけど、うちの子が可愛い」という感想を抱くのもまた納得。
やっぱりね、うちの子の特別感って半端ないんすよ!!

また、本話の見どころの一つが「他者にやさしくなれる真澄さん」。
恐らくこれまでの真澄さんは席を譲ったり、
他人を褒めたりすることなかったんだろうな…と
同僚たちの反応からも分かるんですが、
スターレットが届いていないにもかかわらず優しさが溢れだしてました。

それだけの多幸感をドールが与えてくれてるって凄くね??

しかし、このお話の一番面白いところは間違いなくココ。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』1巻p.34
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』1巻p.34

ドール買ったと思ったら頭だけ届くとか、もはや1種のホラー。
これは事前に知っていないと実際に間違える人は多いかも。

特にオークションサイトはヘッド状態のみで出品なのに
写真はイメージ画像が設定されていることが多い2ので、
どうしても写真のまま届いちゃうと思ってしまう人はいそう。
私もドルおじで履修してなければ危なかったかもしれない。

とはいえ、単純にゴロンと生首だけ届いたらやっぱり怖いよね。
知ってたら「可愛いヘッド来ちゃ~♥」だけど、
知らなかったら「え?? これをどうすれば??」と絶対なる。

真澄さんもそりゃあこんな顔になるよ…。
まぁ大笑いしたんですけど(ひどい)。

第3話「ようこそ沼へ」

ヘッドのみ届いて絶望の真澄さんに同情しつつも、
私が初めて本話を読んだ時の感想は
「真澄さん、コーラ飲むんだ……」でした。

いや、なんかイメージが炭酸飲料飲んでいるって感じでなくて……。
あと、この人いったい何本消費したの??
ベッド元に落ちてるペットボトルの量が異常でしてよ。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』1巻p.37
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』1巻p.37

この後、わざわざ炭酸飲料をシャカシャカ降って
口に含んで噴き出すという奇行を発揮。

よっぽどの衝撃を受けたんだとしても、
なかなか常人にない狂い方である。
こいつぁ、おもしれー男だぜ。

ただ救いも早くて、ドールには別売りボディがあることが判明。
SNSでフォローをしていたペリメニさんに導かれて
心躍らせる真澄さんが妙に可愛く見えました。
おじさんなのに! おじさんなのに!!

第4話「white sphere」

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』1巻p.57
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』1巻p.57

まだ見ぬドールオーナーに心を躍らせる真澄さんの前に現れたのは、
ペリメニというドールを所有する好青年「星野暁之」くん。

ドールオーナーといえば女性という固定観念から
女性オーナーを妄想していた真澄さんが
「正直少し残念で、安心した」という感想を抱くのは
凄く自然だなと思いました。

そりゃあドールは女の子のものって思うよねぇ…。
私も界隈に入るまでは8:2で女性比率多めって思ってた。
実際のところそんなに変わらない気がする。

真澄さんはたぶん「男(おじさん)のくせにドールなんて……」と
思っていた節があるんですよね。

でも初めて出会えたオーナーはなんと男性で、
ドールを可愛いと思うのが普通で自分の感性を
認めてくれる同性がいると分かった。

それが「ホッとした」という気持ちに現れたんだと思います。

ここ、凄くさらりとした場面なんですけど、
心の機微をめちゃくちゃ丁寧に描いてくれているんです。

私は女性オーナーなので実際に世の男性オーナーがどう感じているかは分かりませんが、
たぶん真澄さんのように感じているオーナーは少なからず存在するとは思っています。

そんな男性ドールオーナーを励ますには十分すぎるシーンだと思うのですよね。まじで尊い。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』1巻p.63
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』1巻p.63

ドール喫茶「ホワイトスフィア」のシーンでも、
真澄さんが抱くドール趣味への偏見が語られます。

これもまた現実に存在する偏見で、
残念ながらドールが万人に受け入れてもらえるものではないことを
作者さん自ら認めていることが伺えます。

ただそれを「ドールを理解できない人は悪!」と否定するわけでもなく、
「ドールを愛する人は気味悪い」と肯定するわけでもなく、
「同じ価値観を持つ者同士で認め合えばよい」と諭してくれているところが素敵だなと思いました。
そりゃあ真澄さんもドール好きがこぞって通うホワイトスフィアに週2で通っちゃうよねぇ!!

……ねぇ、なんで京都にドール喫茶ないの!??!?!?
国内最大手のドールメーカーといって過言でないボークスのお膝元なのに!!!!!!
天使の里はSD以外ダメだからSDオーナーでない私はどこに行けばいいんですか!?!?!?!?

第5話「底なし」

エーテルドール・スターレットの生みの親「甘仲能人」について語られ、
スターレットがドール界隈における”曰くつき”と呼ばれる所以が判明します。

ここで初めて真澄さんは、
ばらばらにされてしまったスターレットを完全体でお迎えすることは
ほぼ不可能であることを悟る。

星野君は「ドールを迎えると次々とお金がかかる。そんな現象を界隈では『沼』と呼ぶ」こと、
スターレットがその中でも底がないことも教えてくれます。
「こんなに丁寧に手取り足取り教えてくれなんて星野君聖人すぎじゃねぇ……?」と
初めて読んだときは思ったもんですが、ドール界隈には実際にいる。
めちゃくちゃ初心者オーナーにやさしい。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』1巻p.81
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』1巻p.81

思いつめる真澄さんへ向けた、この格言が大好きです。
すべてが完璧にそろったドールももちろん良さはあるけれど、
カスタマイズによる”自分らしさをドールにぶつけられること”も
ドールを所有する理由の1つだと思う3

そして、バラバラになってしまったスターレットの背景を知っていたが故か、
星野君のドールにかつて使っていたボディを
惜しみなく真澄さんに譲ってあげるのがもう素敵すぎる。

ボディって、真澄さんは「割と安い」と評していますが、結構値段はするんです。

真澄さんはヘッドで約100万使っているから感覚がおかしくなっているだけで
低所得な私にとってはボディ1つで結構家計が苦しくなる。

そんなボディを譲ってくれる星野君のぐう聖ぶりに感激する。
いや、マジで優しすぎるドール界隈では、
実際にお古ボディを譲ることってあったりするのか?

また、ここでもう1つ注目したいのが、
しっかりと思いを伝えて感謝を述べれる真澄さん。

この人少し前まで心空っぽだったんですよ???
何この素直で優しい人。読んでるこっちも照れちまうだろうが!!!

第6話「おはドル」

星野君からドールバッグも譲られてた。星野君神様なの?

そんな感想飛び出す本話は、スターレットに癒される朝からスタート。
ドールと出会ってから上機嫌Max、世話焼きモードへと移行した真澄さん。
初めて読んだときは「いやいや、流石にここまでは……」と思ったものだけど、
ドールオーナーになった今は「超分かる……」と思う程度にお世話したかった。

私の初ドールお迎え時はそこそこヘッド状態が長かったけど、
毎日ヘッドを保管していた箱を覗いたし、
ドールとして完成してからは毎日髪を梳いた。

今はだいぶ落ち着いたけれども本当にお世話したい欲が凄かったです。

ただ、その思いが同僚に伝わるとは限らない。
ついついドールへやるのと同じように、
同僚にも世話焼きモードが発揮されている真澄さんでしたが、
これまでの態度のせいで鬱陶しいと罵られる。

まあ、これは私が同僚「盾前」くんの立場だったら
「鬱陶しい」と思うのは当然かも。流石に声には出さんけど。

これまで何でも否定するような厳しい上司が、
いきなり手のひら返してくるようなもんですからね。
信じられないし、「なんだこいつ」と思うのは普通。
ドルおじの登場人物たちって本当に心の描写がリアル。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』1巻p.105
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』1巻p.105

個人的に、今作1のオアシスだと思っている別の同僚である「小松」さん。
この子、凄く人をちゃんと見てる。
きっと悪い面もたくさん見ているけれど、
ちゃんと相手のいいところを探そうとしてくれている。

ひどい上司だった真澄さんを知ってるはずなのに否定せず、
そんな真澄さんの変化に戸惑い素直になれない盾前くんも否定せず、
「誤解しあわないで欲しい」と自分想いを伝えられるなんて素晴らしい心の持ち主だと思う。

1人でコンビニ弁当を食べながら、
ちゃんと同僚のことを思いやれるようになった真澄さん。

そこでも同じドールオーナーに支えられ、
「おはドル」を通して小さな幸せを噛みしめる。
真澄さんはここで少しずつ歩み寄ることをきっと誓ったんだと思う。

本当はスターレットへのお土産だった一口チョコを、
盾前くんにプレゼントするのは凄く素敵でした。

嫌われてるって分かってる相手に話しかけるってめちゃくちゃ勇気がいる行為で、
その勇気をドールやドールオーナー、そして小松さんからもらったんだろうな。
あと地味に受け入れてあげてる盾前くんも優しい。

何だこの幸せ空間、最高か??

第7話「THE CHOICE IS YOURS!」

星野君と秋葉原のドールスポットを回るお話で、
実際に存在する「ラジオ会館」や「ドールポイント秋葉原」が登場したりする。

私はこの回を読んで、
「次東京に行ったら絶対にアキバのドールショップに行くんだ!」と決意したのはいい思い出。

店舗に置いてある即納ドールたちを見て「8万あればお釣りがくる」と聞き、
「やっすぅ〜」となる真澄さんは必見。

「安くねぇよ!! 普通に高ぇよ!!!」と当初はこんな感想を抱いた記憶があります。
ただ、ドールオーナーになった今、私も真澄さんと同じく8万なら安く感じる不思議。
1/6ドールに至っては平均2万とかなので本気で安いと思ってる。

金銭感覚がバグるって恐ろしいね!

真澄さんは店頭に置いてあるたくさんのドールを見て、
どれもいいなと思いながらもスターレットに似合うお洋服が分からなくなってしまう。

自分のドールに合うお洋服を購入するのは初めてだと意外と難しい。
漠然とこういう風になって欲しいという願いがあっても、
イメージ通りにならないことの方が多いし、
何より自分も「これで良いんかな…」と不安になる。

初心者はドール服のサイズもいまいち分からないものなので、
1着平均8,000円近いお洋服を買って使い物にならなかったら…と思う恐怖もある。

これは実際にドールオーナーにならないと理解できない悩み。
初めて読んだ時、私はドールをお迎えしてなかったので
「適当に買っても良いだろうに…」と思ったけど、
イメージが強ければ強いほど理想が分からなくなって手が付けられない。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』1巻p.135
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』1巻p.135

そんな悩みに寄り添ってくれるのも星野君。
「ドールは意志を持たない」から全てを自分で決めてもいいと真澄さんを励まします。

ドールオーナーになると必ずぶち当たる壁がドールへの向き合い方。
あくまでも物として扱う人もいれば、家族のように接する人もいる。

星野君の意見は前者に近いですが、
だからといって愛情がないわけではない。

「我が子が迷わぬように……」という言葉に、
ドールへの深い愛情を感じることができます。

第8話「選ぶのはあなただ!」

前話でのアドバイスを受けて真澄さんが欲望を解放する回。

ちゃんと星野君のアドバイスも理解しながら、
「ドールに見透かされる気がする」という真澄さん自身の意見もちゃんと伝える。

作者さんの意図は分からないのですが、
私はこのシーンを見て、
たぶん星野君はドールを物として見るオーナーで、
真澄さんはドールを家族として見るオーナーとして描いているんじゃないかなぁと思いました。

そして、対照的な価値観を持つオーナーであっても
尊重しあえるし、理解しあえる。

なぜなら根本としてドールに愛情を抱いているのは変わらないから。

さんざん悩んだ真澄さんの結論「スターレットは天使」。
直近でバニーガール妄想してた人とは思えない理想像が最高。

いやでも、これもなんとなくわかるんですよ。

バニーガールなどの衣装は割と普通に好きだけど、
私も自分のドール達には着せたいとは思わない。

やっぱりドールへのイメージがちゃんとあるんです。
例えば、我が家のドールたちでいうなら、
クドリャフカは牧歌的でふんわりしたお嬢様。
イラスベスは割と対照的にモード系が似合うカッコいい女って感じがいい。
ライカは小生意気な雰囲気があってほしいけど、ショタ系は嫌だ……みたいな。
個々のドールに求める”何か”が絶対的に存在する。

意識的か無意識かは関係なく。

凄く曖昧な何かであっても、それを追究する楽しさもまたドールの魅力の1つだと思います。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』1巻p.153
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』1巻p.153

私が本作通して一番好きなのは、真澄さんのこの言葉。

人はいつだって選択を迫られるもので、
その選択は時々自分が予想だにしなかった間違いを引き起こすこともある。

選択に後悔したとしても、そこから逃げずに向き合っていく。
ドールに対しての言葉ではあったけれども、
きっと真澄さんの人生そのものに真摯に向き合うという決意表明のように感じました。

ところで、本話には「我繭音」さんというディーラーさんのお洋服が登場したのですが、
このお洋服を現実で再現してくれる方はいないのだろうか。

いや、実際に個人で作っている猛者はいるんだけど、
私は流石にこのレベルの衣装を作れる気がしないのだよ。

『ドルおじ』は日本国内のドールショップにもきっと認知されているのだから、
是非とも各社さんがバックについて再現コスチュームとして販売してくれないだろうか。
売り出されたら絶対買うよ。もう欲しくてたまらんのだよ!!

第9話「エーテル」

買ったお洋服をすぐに着せたくなるの超分かりみ~!

ドールにお洋服を着せるという行為は
オーナーにとったら一大イベントなわけですよ。

ドールショップでお洋服を購入した日は、
その場で「着替えさせたい!!」という欲を理性で押さえつけてる状況なんです。

帰宅したら即お着替え。
もうこれは鉄則であり、
特大級に帰宅が遅くなってしまったからといって後回しになどできない。
睡眠時間削ってでもやるよ、常考。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』1巻p.168
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』1巻p.168

ドールのお洋服、本当にめちゃくちゃ小さいのに既製品の服と変わらないです。
ボタンもあるし、ホックもある。
すべてがドールのサイズに合わせて小さくなっているだけで、
服には変わりなく生地感も含めその精巧さに驚きました。

ただ、小さいからこそ着せてあげるのは本当に苦戦する。
私は初ドールがボークス社のソフトビニール製ミニドルフィードリーム(MDD)だったので、
ビスクやキャストドールのようにゴリッとなる感じはなかったのですが、
普通にあり得ない方向に手足が曲がるので結構焦りましたね。

のちにキャストドールのライカを迎えて、
ゴリゴリさせたので初めて触ったときは真澄さんと全く同じ反応しました。

いや、ほんと結構お洋服によっては強めに引っ張ったりする必要もあるんです。
そのたびに「す、すまねえ。すぐ終わらせるから許して……ごめん……」と謝り倒すまでがセット。

なお、そう思っていても中々着替え終わらないことも多い。
真澄さんは2時間かかってるけど割とよくある。
たぶん初回はみんなそんなもん。

また、本話は真澄さんによる最高な沼堕ち宣言があります!!

底なし沼に幸せそうに沈む真澄さんにそっと手を差し伸べるスターレット。
もうね、ここはね、自分の目で見ないといけないレベルの最上級の描き込み。

だからあえて画像の引用は控えてます。
いやもうマジで見所いっぱいだけどやっぱりここは一線を画すというか、
この話が1巻収録の最終話なのがものすごく納得できる。

ここに着くまでも十分引き込まれてたけど、
本話でファンになった人も多いんじゃないかな。

あと、初回で真澄さんはこの目標を完成させることが判明しているので、
安心して彼を見守れるのも良い演出。

限りなく困難といわれたことを、真澄さんがどれほど努力して叶えたのか。
それをワクワクしながらお話が読めるのが物凄く素敵だなと思いました。

私が本作を知ったときは1巻のみ発売していた状況だったので、
「絶対に2巻買う」と決意した瞬間でもありましたね。

2巻感想

ドルおじ2巻表紙
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』2巻

ドールオーナーとの交流が広がり、
各オーナーが抱くドールへの想いにたくさん触れる本巻。

1/12ドールを所有する苔むすさんや自分でドールをカスタムする愛生子ちゃんなど、
ドールへの想いを述べてくれるキャラクターがたくさん登場します。

彼らのいろんな想いに触れて、それをちゃんと受け止めて、
まさしく典型的な偏屈おじさんであった真澄さんが
自分の世界と価値観を広げていく様子は非常に好感を覚えるものでした。

私も実際にドールオーナーになったことで、
ドールオーナーさんと交流を通し、
「ドールとの向き合い方は本当に十人十色だな」と実感するからこそ、
本巻のキャラクターたちが述べるドールへの想いに共感できるところがたくさんありました。

【ネタバレ満載】各話感想はこちら

第10話「Let’s enjoy your party」

真澄さんのドールお迎え祝いにホワイトスフィアでパーティーをしているのが微笑ましい。
身近にドールカフェがないので分からないのですが、
実際にこんな感じでパーティーを開いてくれるようなカフェがあるのかな。

そもそもカフェ自体の経験がないので、
可能であればいつか挑戦してみたいなと思ってみたり。

ドールカフェ素敵だなぁと思うと同時に、
本話は初心者ドールオーナーにとっては
かなりありがたいドールのサイズについての説明をしてくれます。

私にとって『ドルおじ』は一種の教本で、
ドール未所持のときにはまったくドールのサイズ表記がわかりませんでしたが、
『ドルおじ』のおかげで規格がなんとなく分かるようになりました。

この説明を読んで自分がお迎えするドールのサイズを検討するのはかなりアリ。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』2巻p.22
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』2巻p.22

パーティーには星野君とホワイトスフィアの従業員である芦花さんやエルダーさんの他にも、
ナスカさんと苔むすさんが参加してくれます。

ナスカさんは堂々とドールを「奥さん」と称していて、
苔むすさんは「頼れる人生の先輩」と捉えている。
本当にドールへの接し方が人それぞれであることを象徴している回でした。

個人的には苔むすさんの1/12ドールを所有する理由が凄く良いなと感じています。
ドールをお迎えするのって凄く運命的なんですが、
実際に迎えてみるとスペースの確保は難しいわ家計をかなり圧迫するわで
自分の生活スタイルを顧みないといけない瞬間をちょこちょこ実感します。

もちろん迎えたことに後悔はないし、
簡単にできることであれば生活を変えることもあるんですが、
無理に変わるのもなんとなく違うと感じている。

だからこそ、苔むすさんの「憧れがあっても自分の生活に合わせる」スタイルを肯定する様子が、
自分の身の丈に合った楽しみ方で良いんだと言ってもらえてる気がします。

極めつけて真澄さんがそれを「自分のカケラ」と称してくれるのめっちゃ良きなんですよ~!
はぁ~、なにこの幸せ空間。全話幸せ満載って神かよ。

第11話「ナカノ・ロード」

ナスカさんから中野ブロードウェイで創作人形のパーツが売られていたと聞いて、
即中野へとくりだす真澄さんと星野君。

私にとって中野ブロードウェイは過去に1度だけ行ったことがある程度なので
またいずれ是非とも行きたいスポットですね。

近年流行りのカプセルトイにも触れられていました。
きっとドールオーナーなら誰もが同じ悩みを抱えているのがカプセルトイのサイズ問題。
私も「ドールに持たせられるんじゃね?」と思って回したところ
予想外に小さいものが多かったのは良い思い出。

まぁ、私の場合はもとよりミニチュアも大好きマンなので
「まぁ、いくらあってもいいよな!!」と調子乗って何度も同じ過ちを繰り返してますが。
しかも、ミニチュアと相性のいい1/12や1/6ドールにも手を出してるしな!

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』2巻p.47
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』2巻p.47

中野ブロードウェイで星野君とはぐれて
迷ってしまった真澄さんがドールショップで安心するシーン。

実際の中野がどういうところなのか分からないので、
実際問題こんなに迷うのだろうかと思いつつ、
このシーンで真澄さんが立派にドール者になっててニッコリ。

ちなみに、大阪の日本橋で雑居ビルに店舗を構えるドールショップを
「本当にここか?? こんなところにあるんか!?!?」とドキドキしながら探したので、
ドールが視界に入るだけで安心するのはガチ。

第12話「君はエイリアン」

ちょべりばギャルの久保田嬢と愛生子ちゃんが初登場。

久保田さんは、たとえ相手がおじさんであってもドール好きを馬鹿にしない。
使っている言葉がギャル成分強めなので
真澄さんは思わずエイリアンと彼女を称してますが、
おじさんに偏見を持たない時点で女神確定です。

こんないい女、現実でおるんか??

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』2巻p.66
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』2巻p.66

そして、超が付くほどの褒め上手。
そりゃあ真澄さんもこの顔になる。

真澄さんはきっとスターレットを見せるにあたって
非常に勇気を出したからこそ、
久保田さんのストレートな誉め言葉にときめいたんだと思う。

ただそのあとの発言はまだまだだね!

久保田さんの単眼ドール「みきぷる」を見て
思わず「エイリアン!」とつぶやくのは失礼すぎる男である。

まぁ、おじさんだもんね。
日々アップデートしているからといって
そんなに簡単には直らないか。

実際のところ私も未だ単眼や奇形ドールを実物で見たことがないので、
どんなものなのかはちょっと気になります。

ドールは全般可愛いと思っているのですが、
奇形ちゃんを以前写真で見かけたとき、
結構「怖い」って感じてしまいました。

なので、実物を見たら少し黙っちゃうかもしれない。
ほんとにドールっていろんな嗜好が反映されているよなぁと思いますね。

第13話「点と線」

ドールカスタマーで、スターレットのことも認知している愛生子ちゃん。

彼女のカスタムドールである「瑪唖」と「みきぷる」は
どちらも一般的なドールとはかけ離れていて、
真澄さんは瑪唖の登場に思わす息をのみます。

ただ、今度はみきぷるちゃんを見たときのように失礼な発言をしませんでした。
早速成長が感じられる。凄いよ! 真澄さん!!

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』2巻p.92
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』2巻p.92

本話のみどころは、カスタマーならではの視点でドールを愛する愛生子ちゃんですね。
彼女は「心の中のもやもやを呪いのようにぶつける」と語っていて、
彼女のドールである瑪唖は実際にかなり悪魔のような様相をしています。

そして、注目したいのがカッターナイフの描写。
これより「カスタムといいつつ、ただドールを切り刻んでいるのかもしれない」
「彼女はドールを大切にしていないのかもしれない」と思わせるのです。

愛生子ちゃんがドールへ抱く思いは、
ただの愛情だけとはとても言い難く、
もしかしたら怒りや憎しみのようなマイナスの感情が混在しているのかな……。

同時に、彼女の行き場のないストレスを
安心してぶつけさせてくれるのがドールなのかなとも思いました。

たぶん愛生子ちゃんにとってのドールとは「巨大な受け皿」。
ドールがすべて受け止めてくれると信じて、
自分の形容しがたい素直な気持ちをドールにだけは伝えられる。

一見するとドールを愛していないように見えるその行為も、
信頼のもとに成り立ってるのかなと思えば、
ものすごくドールを大切にしているんだなと実感します。

まぁ、あくまでも私の解釈ではあるんですけどね!

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』2巻p.99
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』2巻p.99

だがしかし全てを持っていくのはこの男~!!
矛橋真澄だ~!!!

いや、真澄さんはおじさんだし人生経験があるとは思ってるよ?
でも、つい先日まで空っぽだったんだよな??

今話のタイトル「点と線」ってなんぞやと思ったんですけど、
真澄さんの言葉効いて納得の嵐喝采。

何このイケオジ~!! 惚れてまうやろ!!!

第14話「まちぼうけ」

本話は真澄さんとはぐれてしまった星野君視点で進みます。
正直ね、星野君怒っていいよ。
真澄さんここに来るまでにいろんなポカやりまくってんぞ。
遅刻、無連絡、あと「4階のまんだらけに行く」って言ってくれてたのに
聞いてなかった可能性すらある。

あれ、やっぱこのおじさん1度ヤキを入れてもらうべきでは……?(華麗なる手のひら返し)

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』2巻p.109
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』2巻p.109

1人で中野の店舗を見回り、
軽率にカード切りかけてる星野君に爆笑必須の面白回かと思いきや、
3巻を読んだ今となってはなかなかに星野君の闇が発揮されていたなという印象です。

なお、初見のときには星野君のお節介って
初心者ドールオーナーにとってはありがたいの一言に尽きるなぁと思って読んでました。

マジで星野君みたいな人が身近にいたらドル活が楽しくて仕方ないはず。

もちろん個々の性格によるところはあると思いますけど、
私は基本的に自分から積極的に質問できないタイプなので、
ぐいぐい来てくれる人はありがたいですね。

ちなみに星野君は英語も喋れる。
イケメンでぐう聖で頭もいいとか最強かよ。

第15話「Hide and Seek」

アンティークショップ「あじさい」でスターレットのパーツ探しをするお話。

ビスクドールって実際にどういう店舗で売っているのか想像できていなかったんですが、
やっぱり普通は骨董屋さんだよねと納得。

基本高価なものしかないイメージなので
冷やかしにしかなれないだろうなと入れなかったのですが、
実物のビスクドールが置いてある店舗にいつかは行ってみたいなと思いました。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』2巻p.124
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』2巻p.124

この指摘がまさにその通り。
お迎え前にほぼ必ず宣材写真を見て購入するので、
それに引っ張られておんなじ雰囲気のドールになるかと思ってたんですが、
そんなことは全くない。

どちゃくそ自分の好みにウィッグや衣装を組み合わせている。
もちろんどんな姿でもドールは可愛いんですけど、
オーナーの嗜好が絶対的に反映されるので、
決して同じようにはならないんですよね。

ちなみに、私はスターレットに関してなら真澄さん派。
前任オーナーの暗黒物質さんの大胆なスターレットも悪くはないけど、
天使ちゃんのイメージがもう変えられない。

いや、でもここで一番注目すべきポイントは、
同じドールなのに絶妙に異なるドールとして
スターレットを描けるさとうはるみ先生の技術力の凄さだな……。

本話は物語的にも大きく前進する回なので、
ワクワク感も満載でした。

真澄さんの切なる思いがたぶんスターレットに強く結びついているんですよ。
「なんでわかるねん!」などというツッコミは野暮なもんってなわけだぜ!(抗えなかった関西人の性)

第16話「ドールメイト」

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』2巻p.154
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』2巻p.154

絡まりやすいドールウィッグのお手入れがサクッと学べる神回。
たぶんこの回を見てドールウィッグのお手入れをした人もきっと多いはず。

初心者にとってドールのメンテナンスはどういうタイミングで、
どうやればいいのか全く分からないので、
こういう回があると大変ありがたいんですよね。

ドール趣味に浸っていて基本的に楽しいことばかりなんですが、
1点だけ苦労していることがあって、
それが情報集めなんです。

メンテナンスの方法とか、
ドールを持ち出すときのカバンとか、
一般的なドール界隈のマナーとか、
知っておきたいことがたくさんあるんですけど、案外調べるのは大変。
情報としてはめっちゃ少ないんですよ!!

たぶん、世の中のドールオーナーさんが優しいのが原因。
ドール界隈ではね、星野君大量発生してるの。

実際私もドールをお迎えしてから色々失敗してるんですけど、
その中でも印象に残っているのがドール本体へ色移りさせちゃったこと。

「やってしまったな……」と半分諦めモードで新しいボディを買おうかと思ってたんですが、
同時期にオーナーになった初心者フォロワーさんが失敗談語っていたので便乗させてもらったんですよ。

そしたら、その失敗つぶやきに対して、
解決案提示してくれる先輩オーナーがわんさか現れてくれたんです。

いや、ドールオーナーさん優しすぎる。
もうハチャメチャに親切すぎるんです。
ほんとドールオーナーさんのやさしさにとにかく感謝しましたね。

ただ、これは視点を変えると
界隈内で助け合いが素晴らしいがゆえに
個人間で収束しちゃってるってことなんです!!!

いいことなのに情報としては不足する原因になってしまうなんて!! なんてこった!!!

だからこそ、こうして紙媒体でしっかり説明載っているのが
手軽に読める『ドルおじ』すげぇなって思うわけですね。

スターレットはビスクドール(キャストボディ)なので色移りなどは比較的しなさそうですけど、
いずれ色移り対策などに関しても取り上げて貰えないかなぁなどと期待しています。

さて、あまりにも素晴らしい知識満載回なので
ついついそちらへの感想が主になってしまいましたが、
本話の見どころはここだけではないんですよ。

今回は、誰よりも優しい聖人星野君の闇が垣間見える回なんです。
いつもあんなににこにこしてる星野君が1ミリも微笑んでいないだなんて事変だよ!!
許せねぇ……! 俺らの星野君にこんな顔させる仕事ってなんだよ……!!!

怒り狂う私に反して
真澄さんは「星野君のためにも自分にできるせい一杯をやろう」と決意する様子が印象的でした。

もうっ、もうっ!!
無遠慮に他人の悩みに踏み込まないあたりやっぱこの人おじさんなんだよ!!
人生の頼れる先輩なんだよな!!!

……はぁ、マジで尊い回でしたね……。

3巻感想

ドルおじ3巻表紙
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』3巻

ドールそのものへの焦点が続いていた1,2巻と比べると、
ドールオーナーである人間たちに焦点が当たった本巻。

特に、初心者の真澄さんを
常に優しく導いてくれていた星野くんに
メインで焦点を当てられて物語は進んでいきます。

変わらないドールに癒される反面、
日々目まぐるしく変わる現実。

他者とのコミュニケーションに疲れ、
そんな辛さに押しつぶされそうな時、
助けてくれるのもまた人であることを、
本巻では伝えてくれているような気がしました。

誰だって他人を完全に理解することはできないもの。

だからこそ自己開示をしながら、
時にはぶつかり合いながらも他者を尊重して関係を築いていく。

きっかけは1体のドールだったかもしれない。

けれども、他人を理解しようと歩み寄ることで、
煙たがられていた同僚たちとのコミュニケーションが
うまく取れるようになっていく様子も見所の1つだと思います。

【ネタバレ満載】各話感想はこちら

第17話「チームメイト」

クレジットカードの請求額見てアホになるの絶対にドール界隈あるある。

正直な、お洋服1着が1万円とか見ても金銭感覚バグってるから安く感じてくるわけよ。
それで調子に乗ってたらいつの間にか積み重なって10万超えてたとか普通にあるの。
流石に真澄さんみたいにアンティークドレッサー買うことはないけど。

引き続き、星野君が沈んでいる状況で、
自分に何ができるかを真剣に考えている真澄さん。

心配のあまり真澄さん自身も周りから心配されるようになっていて、
職場の同僚たちが気にかけている様子が微笑ましかったです。

真澄さんが真に嫌われていたら完全無視されるとこだよ、ここ。
たぶん少し前に真澄さんなら声掛けてもらえることもほとんどなかったんじゃないかな。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』3巻p.11
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』3巻p.11

 さて、これまである意味では一番おおっぴろげに
真澄さんを批判していた同僚の「新井」さん。

厳しいながらも悩んでいる真澄さんを叱咤激励するようなアドバイスが光っていましたね。

時期が丁度クリスマス・年末シーズンだったのも相まって、
特別な人に特別な贈り物をする意義を力説する。

ついでに新井さんは相手が誰か知らないので
ちょこちょこ自分の希望を伝えているのが面白いところ。
等身大のキャリアウーマンって感じで好感が持てます。

何気に新井さんのアドバイスを元に、
聖夜の街でプレゼント探しをする真澄さんの選択肢として
腕時計があったのが良かったです。

所変わって、たまたま入った個人店「ガジェットモード」で
ホワイトスフィアの店員さんであるエルダーさんと出会います。

椅子専門のエルダーさんのお眼鏡にかなうカケラは果たして見つかるのか。
エルダーさんはするりと回答を避けた印象があるので
たぶん彼女も色々と思うところがあるんじゃないかなぁと感じています。
いずれ彼女を掘り下げる回も来て欲しいです。

第18話「ソウルメイト」

星野君の職場での扱われ方がかなり心に突き刺さる始まり方。
努力しても認められずに空回って、都合のいい人材として消費されていく。
この消費される人材っていう描写がやけにリアルで、
鬱屈とした気持ちを外に吐き出せずに苦しむ星野君が本当につらそうで堪りませんでした。

こういう経験は恐らく真面目で相手の言葉を信じてしまう人に多いのだろうと思います。

「結果を出せば希望の部署に行ける」なんて、
数年社会にもまれて働いた身としては
ほとんど叶うことのない戯言だと私は思っています。

自分では結果を出すために色々提案して、
実行して、ごく少数の人に認められて……。
なんとなしに結果を作ったと思い込むんですけど、企業はいつだってドライです。

極端なレベルの結果を出さないと評価してくれないんですよね。

ましてや星野君の場合、上司が星野君を見てくれていないので
どれだけ努力したって無駄でしょう。

たぶんこの上司もきっと初めは歩み寄ろうとしていたはず。
飲み会に誘っていたわけですし。

断ってしまった星野君もコミュニケーションという意味では落ち度があったと思うんですが、
より権力が強い上司が部下をないがしろにしているので
個人的には上司へのヘイトが高まりましたね。

でも、これって割とよくある現実。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』3巻p.35
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』3巻p.35

個人的には電話が鳴っているのに、
星野君がいるから出なくても良いとでも思って
談笑している社員たちの描写に1番腹が立ちました。

無性に怒りが込み上げたのは、たぶん私にも経験があるからでしょう。
毎度細かな事務作業を押し付けられてちゃんとこなしていても、
結局愛想のいい人ばかりが得をするっていうか。

人間って極端なほど自分に都合のいい面しか見ない人が多いんです。

私も都合よく解釈することばかりなので決して人間ができてるとは言えませんが、
どちらかといえば人づきあいが苦手なタイプなので
社会になじめない気持ちはよく分かります。

本当に星野君、辛かっただろうな……。

このシーンでは「星野君辞めた方がいいよ!! そんな会社は自分の人生の癌だ!!」と何度も思っていました。

いやほんと、ときには我慢も必要だけど
3年もいて何も評価してくれないならいるだけ無駄だから
自分のために時間を使ってほしいと切に思いました。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』3巻p.50
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』3巻p.50

追い詰められた星野君を救うのはこの男!!! 矛橋真澄ィ!!!!!

ぐあー!!! もう、もうっ!!!
このシーン何度読んでも涙無しには語れないんだよ!!!!!!

真澄さんはずっと星野君に助けてもらっていたと感じてた。
けど、実際には星野君も真澄さんに助けられていた。

友人だとか家族だとか同僚にしてもそうだけど、
お互いにリスペクトしあって大切にしあわないといけないのよね。

そこに年齢なんて関係なくて、
たった1人の何物にも代えられない個人として
対等に関係を築いている2人が素敵で、
本当に大号泣でした。

増量ページのどんでん返しも必見! カッコいいぞ、星野君!!

第19話「真澄ライジング」

初野外撮影に真澄さんと星野君が出かける話。

日の出撮影ってドールの野外撮影に向いているんだなぁとしみじみとしました。
私はドールを手に入れて真っ先にしたかったことがドールを連れての旅行だったんで、
奇妙なほど野外撮影に対してのハードルが低かったんですが、
この話を読んで「普通はもっと緊張するもんだよね」と思いました。

いやマジで今になってみると
当時の私えげつないレベルの強靭メンタル持ってんじゃん……。

常日頃ぬいを連れ歩く奇行っぷりを如何なく発揮してたので
常識がおバグり申しておりましたのよ、うふふ。

本話はスターレットとペリメニの2人が本当に可愛い!!
ドールは1体でも十分可愛いんだけどね、増えるとその威力も倍増するのよ。
見つめあうお写真が現実で欲しいです。

あと、凄く欲しいなって思ったのが椅子ですね。

先生のX(旧Twitter)で紹介してくれていたので
現実に個人ディーラーさんが制作しているお椅子。
だから、その気になればお迎えも可能。

ついつい小物より先にお洋服ばかりを購入してしまう女なので、
今後はドール家具も積極的に探していきたい所存。
そんでもって野外撮影時でもササっと小物を使いながら撮影できるようになれるといいなぁ……。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』3巻p.76
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』3巻p.76

でもこれは草。
本人はいたって大真面目なのも相まって大爆笑しました。 

第20話「小さな星の夢」

トビにやられて病院送りになったことがきっかけで、
過去スターレットのオーナーであった暗黒物質さんの記憶を覗き見ることになります。

ドールを通して真澄さんの夢にちょくちょく現れる女の子の正体がますます気にかかる一方で、
赤ちゃん言葉でスターレットにメロメロなおじいさんの登場に笑いましたね。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』3巻p.85
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』3巻p.85

うん、正直な感想はね、なかなかにヤバいなって。
第三者視点で見てるとちょっとキモイし、変質者といわれても否定できん。

でも、たぶんこれ私もドール撮ってる時こういう感じなんだよなぁ……。
常に「ふへへ、うちの子きゃわすぎマジやばたにえん」とか
思いながら撮ってるし、絶対に鼻の下伸びてる。
他人に見せられない程度には、いつもゲヘゲヘしてますね。

まぁ、でもたぶん全世界共通でドールオーナー皆こんなのだよ(ド偏見)。

また、本話はスターレットが傷つく(物理)お話でした。

どれだけ大切に扱っていてもドールはある意味消耗品。
傷が付いたり、変色したり、些細なミスで破損させてしまう可能性は絶対的にある。

私も初めて失敗してしまった時の落ち込みっぷりは本当に真澄さんと同じくらいで、
「ごめんよ、ごめんよぉ……」と何度も謝った。

少しずつ慣れてくると油断からかミスも増えるので本当に気を付けたいなと思います。

第21話「手に入れた幸せ」

ウィッグ洗濯に引き続き、お洋服洗濯回でした。
初めての星野君ポンコツ回ともいう。
星野君って「ドールに関しては何でもござれ!」と思ってたので、
初歩的なミスをしてるとこ見ると結構嬉しく感じるよね。

ドールに限った話でないのですが、
本来洗濯を前提として作られていないものって洗おうとするのに勇気がいるんです。

私の場合なら相棒と称している「リドルぬい」がいるんですが、
洗って色が落ちたり変色したりするのが嫌すぎて、
何年も連れ出してるのに消臭スプレーと
表面をアルコールウェットシートで拭くくらいしかしていないんですよね……。

流石に汚れが目立ってきていてどうしようかなとか考えています。
たまに「買い替えれば?」とか言われるけど、
他の子を買うっていう手段は絶対にないんだよ。
我が家に来たこの子がウチの子で、いろんな思い出がある子だからね。

まだドール服は綺麗な状態のものばかりなので
お洗濯した経験はないのですが、
今回の話を読んでいずれお洋服の洗濯もしていくことになるのかなぁと思いました。

柔軟剤をドールのイメージに合わせて変えるのもいいかもしれません。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』3巻p.114
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』3巻p.114

あと、猫吸いならぬドール吸いが面白ポイント。
この男、本当に日に日に面白くなっていく……サイコーじゃねぇーの。

無意識的とはいえ友人が着ている前で
これはなかなかにチャレンジャーな行為ですよね。

星野君が引くわけでもなく、めちゃくちゃ微笑ましく見てくれてよかったね! 

第22話「おしえて、愛生子ちゃん」

抉れてしまったハンドパーツを修繕するため愛生子ちゃんに助けを求めて、久保田邸にお邪魔する回。

この親にしてこの子ありを体現するかのような久保田さんのお母さんも登場して、
どんどん作中の人物が増えていく。
それなのに真澄さんの周囲に集まる人は皆真澄さんを否定しないので、
安心して趣味に没頭できるのがいいなと思いました。

あと、久保田さんの母であるやすえさんのハンドメイド技術最強すぎるね。
愛生子ちゃんのドレスは以前から作っていたかもしれないけれども、
普通に売り物レベルの執事服を2着も徹夜で仕上げるって恐ろしい行動力。
ついでに英国式アフタヌーンティーも用意できる。
え、才能の塊? その才能のカケラでいいから分けてくれ!

本話ではカスタマー愛生子ちゃんの実力もピッカピカに光り輝いている上に、
相変わらず初心者向けの知識も満載で素晴らしかったです。

日常ではなかなか使わないであろうペンサンダーなどが登場するので、
実際に自分でできるかは未知数ですが、
将来カスタマーになりたい人にとってはこの回だけでも本作を読む価値があるレベル。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』3巻p.141
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』3巻p.141

 それから個人的に物凄く気になってた稼働ハンドも紹介されました。
以前アイドール(ドールイベント)で見かけて、
買うかめちゃくちゃ悩んだものの、
ネジっぽい装着部が気になって辞めちゃったんですよね。

でも、自在にハンドが動くってことは
凄く生き生きしているように見えるわけですよ。
ポーズの幅もきっと広がる。

ああ~!! 買っておけばよかった~!!!

第23話「邂逅」

この作品のおじさんはどうしてこんなにも面白い人が多いのだろうか。
正直前々話でなかなかHIGHなおじいさんとして登場していたので、
多分普通ではないのだろうなと予想していましたが、
斜め上に面白さを爆発させていました。

暗黒物質こと、「黒井又吉」さん。

ようやく居場所が判明して、
スターレットの前任オーナーである黒井さんに、
パーツの行方を聞こうとしていた真澄さんたちなのですが、
彼が指定してきた場所はなんと病院。

年齢が年齢だけに
苦渋の決断でスターレットの後継者を募ったのかなぁ……などと思いましたが、
一番面倒な病名は「中二病」でしたね。

入院していることを考えれば恐らく持病など年齢特有の病気も患っているとは思うものの、
よく中二病をこの年まで拗らせられたもんだと思わず感心。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』3巻p.169
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』3巻p.169

個人的に気になったのは、
おじさん二人がメチャきゃわなドールを取り合ってる光景を見て
一般のナースさんたちが何を思ったのかですね。

普通に考えればこの光景はハチャメチャにシュール。
「何だこいつら……」と思っても無理はない。

いや、でも黒井さんの奇行に悩まされているみたいだから、
今回も別に何とも思わなかったのかもしれない。

それほどまでにナースさんたちを呆れさせてる黒井さんって……。
「あじさい」のてまりさんは彼と優雅にお茶してる感じだったから
絶対に紳士だと疑わなかったよ……。
いや、こいつぁもしや紳士は紳士でも変態紳士の分類か……。

ドールを手放す事情は人それぞれ。

特に理由がない場合もあれば、本当に苦渋の決断で手放す人もいる。
黒井さんはたぶん後者。
だからこそ真澄さんがスターレットを連れて現れたときも目を輝かせていたんだと思う。

私はまだドールを迎えたばかりなので手放すという選択をとりたいとは思えませんが、
将来的には手放したりするのだろうかと黒井さんを見ていると考えてしまいます。
ただせめて手放すのであればちゃんとドールを愛してくれる後継が見つかればいいなと思う。

真澄さんは初めの取引で黒井さんを不快にさせてしまった後継者だけれど、
今はスターレットを愛して彼女と出会わせてくれたきっかけの黒井さんに感謝と敬意を抱いているはず。

何より真澄さんの周りにはドールを愛するドールオーナーたちが集まって、
真澄さんを支えようとしてくれている。

良い人の周りには自然と良い人が集まると思うんですよね。

真澄さんの友人たちを見れば
きっと彼がスターレットを深く愛していることも
黒井さんに伝わるだろうと思います。

いつか黒井さんとスターレットを囲んでゆっくりとお茶してほしい。

4巻感想

ドルおじ4巻表紙
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』4巻

スターレットのパーツを求めて訪れた、
前任オーナーである暗黒物質こと「黒井又吉」を中心に物語が展開する本巻。

永遠を生きるドールと限りある一生のオーナーという現実に対する苦悩から、
楽しいドールイベントの様子まで多岐にわたるテーマが収録されており、
スターレットに影響を受けた多くの人々の生き様が鮮明に描かれています。

ドールという1つの”モノ”に人生を捧げていた黒井さん。
けれども、彼にとって本当に大切なものは何だったのか。

ドールを通してつながる絆は尊いものですが、
その絆によってこじれてしまう関係もある。

これまでは助けられてばかりだった真澄さんが、
前任オーナーの想いに触れ、それを継承する者の願いに触れながら、
理解しようとする姿勢に感動する素敵な1冊でした。

【ネタバレ満載】各話感想はこちら

第24話 「同じ沼の底で」

愛生子ちゃんが黒井さんに丁寧なメールを送ってくれたおかげで今回の面会が叶ったらしく、
真澄さん・星野君・愛生子ちゃんの3人は黒井さんの病室に訪れているところから本話はスタート。

「人形を愛する者に会いたくなった」と語る黒井さん。
同時に、爪先のパーツを発見したことを愛生子ちゃんのメールで知り、
落札者である真澄さんに対しても興味が湧いたそう。

初手のやりとりで「不愉快ですし迷惑です」とまで言っていた相手に対し、
歩み寄ってくれる黒井さんは変なおじいさんではありますが、
懐の深さが既に示されているように感じました。

本話は改めて新旧オーナーが対面して会話をすることで、
スターレットのオーナーだからこその2人の描写がとても印象的でした。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』4巻p.10
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』4巻p.10

特に、真澄さんがスターレットのパーツを見つける際に見る「光」。
黒井さんはこの光を「砕け散る刹那に、たった1度だけ」見たと述べました。

ここで少し疑問を抱くことは、
真澄さんは既に何度か光を見ているのに対して、
黒井さんはたった1回しか見ていないこと。

ドールに関して詳しいのは明らかに黒井さん。
にもかかわらず、真澄さんの方が特別な体験をしている理由が気になるところです。

「窓際で眠る少女」にしても、
真澄さんには話しかけるのに黒井さんには話しかけない。

どちらも変態紳士な側面を持つおじさんオーナーという共通点があるのに、
2人でこれほど違いがなぜ生まれているのか。
この謎も追々判明していくと思うので、ストーリー展開が楽しみですね!

本話はこのほかにも印象的なシーンがたくさんあるのですが、
「一生涯存在し続けるドール」と「限りある命の人間」という
ドールオーナーにとっての最大の哲学的テーマにも言及されていることも注目ポイントでしょう。

オーナーは決して永遠一緒にはいられない。
残していく我が子のためにできることを、
生きているうちに用意してあげなくてはいけない。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』4巻p.26
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』4巻p.26

お年を召して入院する黒井さんから
「一生添い遂げることはできない」と述べられてしまう、
その説得力は計り知れないもの。

どれだけ愛していても、突然事故や病気でオーナーがいなくなってしまうことだってある。

死期を悟っているのなら、
なおさら事前にドールを手放すのもまた、
我が子への愛情ゆえであると考えさせられるお話でした。

ちなみに、私の感想がシリアス多めの部分に言及しまくってるだけで、
本話は試練と称しておきながらドールイベントへお使い頼まれたりと笑える要素もしっかりあります。
このコメディとシリアスの絶妙な匙加減が、『ドルおじ』の魅力でもありますね。

第25話「初陣」

ドールオーナーにとっての一大イベントといえば、
様々な主催によって定期的に開催される即売会でしょう!

本話はそんなドールイベントをテーマにしたお話で、
『ドルおじ』の世界では「ドールズメモリー」こと「ドルメモ」という名称となっていました。
現実でもありそうな名前ですね!

私も近畿周辺で開催されるイベントにはよく足を運んでいて、
毎度破産寸前に追い込まれてます。ホシノクンハ、イダイダナー(棒)。

イベント名物の先行券であったり、1点ものを狙う緊張感であったり、
1度イベントに参加したことがある人なら「わかる~!」が満載の回でした。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』4巻p.49

まぁでも一番首がもげかけるほど頷いたのはこのシーン。
私も「今回の予算は栄一1人だけ!!」といって出かけて、
栄一を殉職させまくる猟奇殺人鬼になった記憶しかないな。
魔法のカードが火を噴いてやらかしてることもある。

イベントの予算って皆さんどんなものなのでしょう。
私は平均5万です。調子乗ると10万ポンッといきます。アホですね。

また、本話には実際に存在するディーラー様の作品もいくつか登場しており、
「えー! こんな作品もあるんだ!」と驚き要素がふんだんです。

もちろんディーラー様の作品は希少なので、
それらを手に入れられるかは別問題ですが、
『ドルおじ』に掲載されたディーラー様の作品がつい欲しくなってしまいました。

その後、黒井さんのお使いで頼まれたディーラー様のブースを発見したところで、
「並ぶブース、お間違えじゃないですか?」といわれるのは少し笑いました。

でも確かに正直写真集は後回しにするよね…!
いろいろ目移りしてたのに、
キッチリ目的地にやってきた真澄さん偉すぎる!!

私なんて片手では足りない程度にはイベント経験を積んでいて、
「今日はお洋服お迎えしないぞ! 小物だけにするんだ!」と意気込みながら、
意志薄弱すぎて何度裏切ってきたことか……。
お使い頼まれれても「写真集なら残るよな…」と別のところ行っちゃいそうです。
ドール用品優先しちゃうのはドールオーナーの性なのだよ…。

あと、先行でイベント開始を待ってる数分間の微妙な空気感も非常にリアルでした。

第26話「会敵」

ヨツハというドールを所有する「ギンガ」さんのブースで、
彼が撮った写真集をちゃっかり自分の分も購入した真澄さん。

グラスアイを宇宙と称するおじさん2人。
きっとドールオーナーでなければ、
「何言ってんだこいつ」で終わってしまう会話ですが、
グラスアイの美しさを知る人ならきっと納得の台詞でしょう。

私は基本的にグラスアイを用いていないため、
宇宙を感じる機会が少ないのですが、
何故かウチの子未使用のグラスアイを所有してます。
ドラゴンぽくてかっこよかったから…! 使えもしないのに買っちゃったんだな!!

アイ単体でもその美しさに魅せられてうっかり買ってしまったんで、
実際にドールに付けてもらえばその魅力がより伝わるんだろうなぁと思います。
……アイからドールを生やすか……?(やめろ)

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』4巻p.73
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』4巻p.73

このシーンも激しく同意するしかなかったです。
ウチの子単体で撮っていても確かにドールは可愛い。
でも、何故かよその子と交流しているともっと表情が嬉しそうに見える。

私はドールに魂が宿ると思うタイプでないため、
あくまでもモノとして捉えていますが、
それでもふとした瞬間に「なんか今日凄く機嫌がいい?」と感じる瞬間があります。

それは大体他のドールちゃんと交流している時なので、
いろんなドールちゃんと交流する楽しさを伝えてくれる本話は、
ドールを所有する良さを最大限描いてくれているなと思いました。

まぁ、オーナーのコミュ力が雑魚すぎて、
ウチの子はあまり交流させてあげられてないんですけどね! ごめんよ!!

そんな素敵な雰囲気もつかの間、
今回のタイトルは「会敵」。
いかにも不穏なタイトルだったのにはちゃんと理由がありました。

つい先ほどまでお互い共鳴し合っていた、
真澄さんとギンガさんでしたが、
スターレットと聞いてギンガさんの態度が180度転じてしまう。

なんていうか、やはりスターレットをめぐるアレコレは
決して平穏なままではいられないのだよなぁと実感する瞬間でした。

第27話「急襲」

ギンガさんが喧嘩腰になった理由は、
スターレットのオークションで真澄さんが最後まで競り合った相手だったから。

「俺こそが正統な後継者だ」と主張するギンガさんは、
真澄さんのカスタムにいちゃもんをつけ、
スターレットはアンティークになる資質があると豪語します。

この台詞、どこかで聞き覚えあるな…と思ったら、
以前の話で黒井さんが子供たちに語っていた
「アンティークになれる可能性を秘めている」と同じなんですよね。

初めこの話を読んだ際には気づかなかったのですが、
読み返しているうちに「ギンガは強く暗黒物質の影響を受けている」ことを認識させられて、
後の展開も含めて胸がキュッとする思いになりました。

とはいえ、オークションでどんなアクシデントが起ころうと、
その背景にのっぴきならない理由があろうと、
最終的に競り勝ったのは真澄さん。

「返せ」というのはお門違いも甚だしい上に、
ギンガさんがどうこう言えるものではないのです。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』4巻p.85
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』4巻p.85

そして、ここのシーンが辛すぎる。
スターレットの美しい瞳から光が消えている。
先ほどまでグラスアイに宿る宇宙について語っていたのに
その輝きを曇らせる行動を他でもないギンガさんがしてしまっている。

スターレットの価値をお金で買おうとしている描写が本当に苦しかったです。

まぁ…直後に、我繭音さんが蹴り飛ばしたシーンは
思わず「よくやった!!」と思っちゃったんですが。

それにしても成人男性を蹴り飛ばせる脚力、凄すぎんか?
…と、思っていたらこの回のWEB掲載時のコメント欄に
「我繭音さん、盾前くんでは?」というコメントを見かけ、
「あ~!! だから真澄さんを見てハゲ呼ばわりしたのか」と納得しました。
盾前くん、男の子だから男性も蹴り飛ばせるわな…。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』4巻p.95
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』4巻p.95

それから、逃げるように会場を出ていってしまったギンガさんを
真澄さんが追いかけていくのも印象的でした。

真澄さん、本当に成長しているよね。
これまではずっと自分の事で精一杯で、
周りに気を遣う余裕なんて全くなかった。

けれども、ドールを通していろんな人に触れて、
色んな人の悩みに真摯に向き合い、
その人の内面をちゃんと見てあげようと努めている。

登場当初は冷たい表情だったのに、
物語が進むにつれてどんどん柔らかくなっていき、
温かみのある人になっています。

関わらない方がいいという星野君の忠告も踏まえた上で、
「ギンガさんを理解したい」といえる勇気は凄いなと感じました。

第28話「今際の際のライフワーク」

ところ変わって、ドルメモ不参加組に焦点が当てられます。
久保田さんと愛生子ちゃん、やすえさんに黒井さん。
この4人で黒井さんの思い出の場所にやってきているようでした。

黒井さんは病院生活で、一人で外に出られないため、
やすえさんの福祉車両を使ってやってきたそう。
やすえさん、いろいろできすぎる人やしないか……? いったい何者??

この回はほのぼのとした家族の光景が広がっていました。

もちろん実際には血のつながりがあるのは久保田さん親子だけ。
しかし、ドールを通じて得られた縁が疑似家族のような関係を気付き上げており、
非常に優しい世界が広がっているようでした。

黒井さんは、既に80歳を超えるご長老。
近年は80歳でも元気な方が増えましたが、
黒井さんは入院している以上健康とは言えません。

そんな人が「何も得れず何も遺せぬ人生だった」と悲嘆する様子がとても物悲しい。

けれども、黒井さんの脳裏ではギンガさんとの思い出を振り返っていて、
きっと何かを成すよりも大切なことをギンガさんから教えられたのだろうなと察することができました。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』4巻p.113
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』4巻p.113

さらに、本話一番のシーンは間違いなくここ。
「何も遺せない」と語った黒井さんに対する、愛生子ちゃんの言葉です。
彼女がドールの世界に飛び込んだのは黒井さんの写真のおかげ。
そのおかげで彼女は今、世界が輝いて見えている。

黒井さんは何も遺せなかったわけではなく、
確かに1人の少女を救うほどの「宝物」を遺してくれていたのです。

この直後に描かれる書籍一面を使ったイラストは圧倒的な書き込みで神秘的。
「何も遺せぬ」と語ったときは蕾だった花が、
美しい薔薇を咲かせた描写も最高でした。

第29話「追憶」

シーンは真澄さんたちに戻って、
ギンガさんと黒井さんの関係に迫るお話です。

黒井さんは前話でギンガさんから「今際の際のライフワーク」を教えられ、
ギンガさんのおかげで救われていた様子が描かれていましたが、
今回はギンガさん視点のストーリーとなっていました。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』4巻p.136
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』4巻p.136

この2人はなんていうか、どちらも不器用なのですよね。
元々世界からはみ出してしまった2人だから仕方ないのかもしれませんが。

お互いのことを大切に思っているけれど、
その中心にはスターレットがいて、
スターレットがいないと成立しない関係性であると
どこかで感じていたのかもしれません。

だからこそ、黒井さんはスターレットに奇妙なほど憑りつかれるし、
ギンガさんもそんな黒井さんを止めることができず、むしろ後継者として名乗り出てしまう。

黒井さん自身は「夢に出てくる少女」のことも相まって引き際を見失ってしまったのでしょうが、
それを大切なギンガさんに背負わせることはしたくなかった。
自分と同じ道を進んで欲しくなかったのだと思います。

でも、不器用でちゃんと話し合わないからこそ、結局はすれ違ってしまう。

一度は断られたスターレットの足パーツをギンガさんは必死の思いで入手しました。
しかし、黒井さんはギンガさんの知らないところで、
スターレットをオークションにかけてしまう。

それも、足パーツを手に入れた丁度その日に…。

オークションでアクシデントに見舞われたと第27話で述べていましたが、
頭を下げて大金を支払って帰還したばかりのオークション。
当然なんの準備もできていなかったので、充電切れも予期せぬ出来事だったのでしょう。

そして、スターレットは自分たちに全く関係ない第三者によって競り落とされてしまう…。
このときのギンガさんの絶望感は簡単に形容できるものではないはず。

出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』4巻p.155
出典:さとうはるみ『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』4巻p.155

ギンガさんがスターレットの足パーツをもって、黒井さんに会いに行ったとき。
どこか黒井さんはギンガさんが落札できなかったことを喜んでいるようでした。

こちらはたった1コマで表情も詳しくは分かりません。
でも、微妙に口角が上がっているようにも見える。

これがきっとギンガさんにとってのトドメだったのでしょう。

どちらも相手を思いやっていたはずなのに、
はみ出し者で不器用な2人は決裂し、
それがスターレットの足の破壊につながったのだと思うととてもやるせなかったです。

まとめ

ただのドールの漫画と侮るなかれ。

ドールはメジャーとは言えない趣味のひとつとして認識されがちですが、
その趣味にかかわるドールオーナーの多くは
1人1人真剣に想いを抱いて自分のドールと向き合っています。

それは、自身の幸福に繋がり、他者への愛情をかけるきっかけにもなり得ます。
むしろ、ドールは人型をしているからこそ他の趣味よりも人への優しさを与え、受けやすいかも。

本作は、そういったドールを通しての人間的成長をこれでもかというほど丁寧に描いています。
だからこそ読んでいて気持ちがいいし、優しい気分になれる。
そして、自分もまた誰かに優しくしたいと思えるのです。

ドールオーナーとしてのあるある話に笑い、人としての悩みに共感して感動できる。

そんな、素敵な作品です。

私は本作に出会えて本当に素敵な経験をさせてもらえました。
ドールオーナーとしてはまだ未熟者ですが、
真澄さんと一緒に人間的にも成長しながら、
胸を張ってドールが大好きですといえるような存在になれればいいなと思います。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

気になった方は『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』を今すぐ読もうね!

  1. 2026年4月26日時点。 ↩︎
  2. もちろん、ヘッドのみの写真を掲載してくれてるディーラー様もいます。 ↩︎
  3. 私の場合、おかげさまで自分の性癖がびっくりするほど透け出て来た。 ↩︎